茨の剥製
石を割ったならみな散り散りに生まれおちる光るたてがみ
茨の剥製
叶え終わった願いごとの水温が未だ続いて
鹿の子模様の空は東
スピネルの浜辺で瑕を創る
痛切から与えられた輪郭線
月明かりを洗い流すほど汚れていく洗面台
白日でサンドイッチする夢語り
無闇に似合う真珠蒔き散らして夜
ろうそくの端っこに灯るスイートピー
石を割ったならみな散り散りに生まれおちる光るたてがみ
茨の剥製
叶え終わった願いごとの水温が未だ続いて
鹿の子模様の空は東
スピネルの浜辺で瑕を創る
痛切から与えられた輪郭線
月明かりを洗い流すほど汚れていく洗面台
白日でサンドイッチする夢語り
無闇に似合う真珠蒔き散らして夜
ろうそくの端っこに灯るスイートピー
おはようをそそがれたのなら塵になる
永遠の麦畑へのスリップ事故
乾くほど泳ぎやすい月下
消えては顕れ洗われる舫い
遠つ円環とはマーブルキャンディ
花束であることの十分条件
火の粉に含ませる花蜜
睦言とクロックムッシュとの切り分け
森を透過して狼を探す
黎明が跳んで弾んでいった先
鋳溶かされた脇腹
イドに多い浮き玉
鍵への比喩をすべて拭って洗って遺失して
牙の子と雛子
銀の傘、白い傘を携えて降るだけ降って
繰り返しが効きにくいこの頃
食卓が理由で、理由とは異なるテーブルクロス
波に貼られた銀色
光る翼を裏返したら真っ黒い新月
輪郭に成りもせぬ旅程
音楽はどこにでもすぐ挟まって
砕かれたい墓標と砕きたい切っ先と
瑞兆の末席
雪像に口紅を塗らなくては
綴じないせいで転がる天体
出囃子みたいな目玉焼き焼けた
等しさとの距離を近づける
まっさらになる繊毛花弁球根花束
火傷と菫とキャラメリゼ
落葉樹たちを縫い取り歩く
アイスグレーへと到達する海流
踵を上げて両腕を上げているのも溢れていく為
キュッとギュッとしてうさぎ
蝶の通過した回路
波の連なりから逸れていった波
平面標本箱
星と私とシューティングゲーム
真水の仕草
無重力の国のスパイス・ラック
蘭の幼生
親指が夕焼けを拭う
海洋の骨格
崩折れるケーキキャンドルたち
クッキー缶に溺れっちまう
氷か骨か魔法の歯触り
去り際の頬
残響の内にクジラ尾を探す
白百合を紺に浸した
光と和毛と斑になって
瑠璃玻璃を剥がしたお空
暗がりで読み上げられる天体運行表
クレパスの青を掬ったお菓子
月面を鎮めるトウシューズ
蠍の名前はピンクサファイア
動態の透明石膏
判例集は満ち欠け
ハレーションの真似事
飛行術、海の
眩いグリッドの仮称の宇宙
漲らせた線を、
朝ごはんと昼ごはんの蝶番
褪せたり灯したり鄙びたり
貝殻のたましい
蝶を食べて永らえる海
翼に倣うなら
塔を育てているらしい雨
半分くらい満月
分離さる野苺と初夏
幕の仕掛けが壊れてしまって
夜明けの手前をコインで削る
橄欖石の種を吐きだす
銀の箒で夜を掃く
月光が逃げ出してくる回転扉
御者台のブランコ乗り
木漏れ日の底が抜けた
スワローテール・リボン
とろとろに光る冠の下
猫舌と薬瓶
パンオレザンの秘密を聞き齧る
木蓮の靴を揃える
ウラングラス紀行
偽史でかがる真円
キャンディーケーンが春空を突つく
仔犬はワルツ、シリウスも
早緑真珠
白うさぎに見つかった
月の皮を剥ぐ
テキスタイル pattern10.チョコレートスプレー
灰舞う宇宙
半ダースの悪意
鍵の多い宇宙
カメオルースの鼻梁に同じ
煙管に連なる蝶々千頭
白から白に着地するまで
ただ一羽の為の旅行鞄
月へと引き揚げていく錨に乗って
吊るされたロケットの、月の、隙間を横切る光が
手探りの花吹雪
不思議に静かなクリームソーダ
水色の終わりに
貝殻と砂粒に与えられた期間
時祷書に蔓延るストロベリーフィールドを行く
天国を火種にして
凪の果てにて
華やいでばかりの袖口
春の野の舫いにオーガンジー
罅を持たない雛のないこと
目深な星影
マリネよりもゼリー寄せよりも冷たくなれる
幽霊屋敷を建てたいな
石塊の姿態
紙吹雪から青を盗んだ
空っぽを盗掘しに
瓦礫には色彩を持てない
氷と音楽の成長期
鈴蘭の月のアイスグレーへ
声帯を海が削った
ビジューの埋葬地
掘るように掻くように溺れていくから
満帆に孔雀尾
アップルパイの皮相に刻むラグナロク
鱗も花弁も秘密の捲れる
幼気に蓮葉を渡る
季節を溶いて、際を伸ばして
隈なく黒いひまわり畑
サイエンスとフィクションの浅薄を生きる
晴天を潰したくしゃくしゃ
泥濘んだ棄教
春を尖らせる
蛇の乳
青胡桃の隣へ
唇に爪先に内包するリボン
操舵輪を抱えて目を瞑る
背負いきれないマリーゴールド
そのようにしか引けない星座の線を
多面体の戯れ
ドレープ・クレープ・バターシュガー
練り飴と蜘蛛
バニラをこそげた手指を持て余したまま
幻たちの息遣い
クリームソーダの横臥
香辛料と魔法陣で作る色相環
錯視の調律
白雪城主
水滴に描き込まれた森
それよりも儚いスフレケーキ
段階としての水鳥
燕の啄む星々
ひたひたのうさぎとフレンチトースト
呼ばれ慣れない砂漠でいたので
趺に羽毛を翼に炎を
硝子としては潰えた生命
国には軽くて星にするには重い名前
幸いを摺り切り一杯
追伸が長くなりそう
どうとでもなれそうなクッキー生地
日記を二種類
ピンクの靴でカラフルを撒きに
フラミンゴと金魚のつるし雛
ランプシェードと鳥の境目
居待月のディップ
銀河に届くフラフープ
さくらんぼ柄も実る季節
思考実験としてこの白い花
ジンジャーマンクッキーと曖昧な天使
天球儀の剥製
白日に置く白磁
薄荷よりも真っ白で薄荷よりも辛いドロップ
春から風を奪ってしまった
光に沈む
青い根の行き着くところ
おやすみを酌み交わしたら
キッシュと論旨を崩さず運ぶ
杉と星の最高到達点
タッセルとロープで夜空と分かつ
小さなおびただしい蝶たちが壊れた脚を歩かせる
花火の奔流
昼寝を追い出しても白昼夢が居残っていて
葡萄、書物、蕾、指で繰るもの
真夜中が薄くなっているエリア
雨傘の発達
銀色の指で示すカフェメニュー
ケーキを床に落としたのだから首根っこで爪を研がせて
香水瓶の渇き
四季もここも静まり返って
月が痩せていくように月が丸くなるように
棘に似て光
ぬいぐるみに懐かれない
星とうさぎと行く航路
真冬を下絵する
角砂糖に日なたが宿る
家政学史と手を取り合って加速していく
幾何学模様を尽く踊る
恒星スイッチ
銀翼ストライプ
クローゼットの永年の迷子
シフォンを引き裂くハイヒール
ストロボに瞬きしなかった
隅っこでエコー
優しい直線
カットワークに来る赤光
シュー生地に挟まれた冬
ドアノッカーかも、しっぽかも。
鳥の卵を描き分けていく
ネグリジェを着たドールスタンドの欠伸
パイ生地で覆ってしまうから平気
船にでも矢にでもなれるけど
水玉を裾から払う
メレンゲと星月夜とクッキー缶
森を模した縁を囓じる
非営利の個人によるお題配布サイト
2016年2月4日開設
佐和子
Wavebox
趣味の範囲でのご利用をお願いします。
改変可、配布元表記は不要です。